「琢磨や琢磨の妹みたいに、傷つけるかもしれない。拒絶されるかもしれない。そう考えたら、動けなくなった。…怖くなった。

…それでも最後まで、根底の気持ちだけは、変えられなかった」

風が、頬を撫でる。

椅子から立ち上がって私の目の前に立ったトキは、私と目線を合わせるように腰をかがめると、息を吐いて続けた。

「あの時――拒絶した俺に向かってきて、過去を聞いて、それでも傍にいたいって言ったお前を見て…消せないものを抱えたままでも、強くなりたいと思った。

胸を張ってお前を支えていける、守れる自分になりたいって」

そこまで言うと、トキは照れたように、こんなくさい台詞を言わせられんのはお前だけだ、と笑った。

思考が追いつかず、ぽかんと口を開けたまま、トキの次の言葉を待つ。


私に向かって伸ばされた手が、頬に触れた瞬間、どくん、と胸の奥で心臓が強く脈打つのを聞いた。


「傍にいたい、と言ったな。だけど――それは、俺に言わせろ」



深い藍色の瞳が、胸を貫く。













「お前が好きだ、東子」