話は、間をあけながら進む。


「……あの事件からずっと、俺は人を避けてきた。他人に関わること、心を知ること。…俺には、そんな資格は無いんだと思っていた。それに、きっと最後には傷つくんだと――そんなことさえ思っていた。

だけど、音楽に出会って、ひとつのことを続ける楽しさを知って、仲間が出来た。
初めてのライブでは客と一体になって、そこで本当に一人じゃないと思えた。

失ったものがあったから、気づけたこともあった。

……そして、お前に会った」

私を見つめる、深い藍色の瞳が細められる。

「初めて会った日のこと、覚えてるか」

こくん、と頷くと、小さく頷き返される。

「あの時、俺はお前がライブハウスに入ってきたときから、気になってた。

連れもいんのに迷子みたいな顔で、全然盛り上がるようすもなく前列に居て。最初の印象は、ただの変なヤツだった。

だけど、ステージで目の前に立って初めて目が合った時、お前の目があまりにも、何も映してなくて空っぽで、驚いた。

…孤独に見えたんだ。寂しそうにも感じた。

ああ、こいつも“独り”なんじゃないかって、その時思った。

だから余計気になったんだ。コイツはいったいどんな奴なんだろうって」


あとはもう、体が勝手に動いた。


トキはそう言って、笑った。


「けど、お前は俺の予想以上の奴だった」