「あの日、琢磨と話して…謝られて、驚いた。お前は悪くない、全部俺が悪いんだ、って」

すとん、とトキの視線が落ちる。

「だけど、俺はそうは思わない」

視線が横に移動し、目を見開いた私を捉えた。
トキは、そんな私に困ったような笑顔を向けて――その切なげな表情に、胸の奥が、震えた。

「俺がやったことは、理由があれば許される、そんなことじゃないんだ。琢磨と琢磨の妹を裏切ったことに変わりはない。沢山の人に迷惑をかけたことにも。

俺は自分を許さないし、これからもずっと、抱えていくつもりだ」

ぶれない声に、胸を深く刺される。
俯くと、くしゃりと顔が歪んだ。加えて目頭が熱くなり始め、私はきゅっと口を結んだ。

…痛かった。

小さな頃から、そしてこれからも、痛みを抱えていくことを決心したトキ。
その心の強さが、弱さを抱えたままの私の心には痛かった。
自分が、途端に恥ずかしくなった。


なのに、隣から聞こえたのは

「何でお前が、そんな顔をする」

という、優しくあたたかなトキの声で。
顔を上げると、穏やかに笑うトキと目が合った。伸ばされた手が私の頭の上に乗って、くしゃりと撫でられる。


「お前には、感謝してるんだ。…お前に会わなければきっと、琢磨と二人で話すことなんて、できなかった」

だから、ありがとう、と、トキは笑いかけて。


私は……泣きそうになった。