握った拳に、力が入る。
額に、じわりと冷や汗が浮かぶ。

この感覚には、覚えがあった。

あの、トイレの個室で

ピアノの話をされているのを、きいたとき。


そして


「本当に低レベルなのよね、学校自体も、生徒も。

生徒なんてもう、人格も疑っちゃう」



その言葉が



ぎりぎりのところで、暴れそうな心を抑えていた鍵を、……こじ開けた。