「……最後の!」

「若林さんっ!」

 振り向くと苦痛で顔を歪ませている。背中に数発の弾丸を受けたのは間違いなかった。

「大丈夫ですか!」

 肺に穴が空いたのか、声色が変わっていた。

「大した事じゃ……ない。もう望みは叶えられたんだから」

 眉間にしわを寄せながら笑う顔が、不思議と爽やかに見えた。
 すぐに病院にたどり着いた。玄関前にバイクを止めると、隆を抱いて降ろす。

「隆くんは先に行っといで」

 俺はそう促した。飛ぶようにして駆けてゆく隆を見送ると、後ろを振り返って声をかける。

「あんたの最後の願い……叶ったよ」

 バイクを降りると、もう動く事はない若林を肩に担ぐ。そして彼の妻の待つ病室へと向かうべく、ガラスの重い扉を開いた。