男の目が驚きの色を見せた。そして泣きながら感謝の言葉を何度も口にする。
男の告げた行き先は先程給油した町だった。嫌な思いをした町だが、ここからなら二十分くらいでたどり着く事が出来るだろう。
回り道が痛いとは考えなかった。幻想の愛と現実の愛、どちらが重いかは歴然としている。そして俺は最後まで人の道を逸れたくはなかった。
(いや、今までずっと逸れてたんだ。最後くらいは……)
それをこの親子は教えてくれたのかも知れない。
子供をタンクとシートの間に乗せ、男をテールの上に座らせた。田舎の暴走族よろしく三人を乗せて走り出す赤いバイク。子供にヘルメットを被せると、少しの開放感と晴れやかな気分で山道を下っていった。
「わたしはずっと妻に苦労ばかりかけてきましてね、ついに心臓を患わせてしまいまして……」
男は肩越しに話し掛けていた。
男の告げた行き先は先程給油した町だった。嫌な思いをした町だが、ここからなら二十分くらいでたどり着く事が出来るだろう。
回り道が痛いとは考えなかった。幻想の愛と現実の愛、どちらが重いかは歴然としている。そして俺は最後まで人の道を逸れたくはなかった。
(いや、今までずっと逸れてたんだ。最後くらいは……)
それをこの親子は教えてくれたのかも知れない。
子供をタンクとシートの間に乗せ、男をテールの上に座らせた。田舎の暴走族よろしく三人を乗せて走り出す赤いバイク。子供にヘルメットを被せると、少しの開放感と晴れやかな気分で山道を下っていった。
「わたしはずっと妻に苦労ばかりかけてきましてね、ついに心臓を患わせてしまいまして……」
男は肩越しに話し掛けていた。