同時刻福岡市――。

 次第に大きくなってゆく振動に真樹夫の家族はひとつになって抱き合っていた。真樹夫の兄が佳絵と繋いだ手に力を込める。

「大丈夫だぞ、佳絵。怖くないぞ」

 迫り来る恐怖を自らも押し殺して我が子を励ます。

「泣かないもん! 約束したもん、マキちゃんと」

 必死に涙をこらえる我が子の健気な姿に思わず天を仰ぐ。そして我が子が、自分が思っていたよりもずっと強く成長していたことに涙があふれた。

「えらいぞ」

 その頭を撫で、精一杯褒めた。


 母親は真樹夫のことを最後まで気にかけていた。

「あの子は……」

 言いかけて夫と目を合わせると、確信に満ちた答えが返ってくる。

「俺たちの息子だぞ」

「そうね」


 二人の瞼に幼いころの真樹夫の姿が映し出される。甘えん坊でわがままな愛する息子……。


 その幼い姿は光に包まれて……やがて失われた。