地面に伏せたまま動かない姿が見えた。俺もその衝撃と足の痛みですぐに体を起こせない。

(俺には……無理だったのか?)

 これが現実なのだろうか。俺は誰も助けられないのだろうか? そんな想いを打ち消す叫びが俺の耳に突き刺さった。そう、美里の叫びが。

「あうああうぁーっ!」

 愛の言葉を語れない女が坂下を見つけて叫び、そして脇目もふらず駆け出した。

「美里!」

 どこにそんな力が残っていたのだろうか、その声を聞いて敢然と立ち上がった坂下は見えないはずの地面を蹴って走り出す。

「うう、あああーっ!」

「美里っ!」

 炎に照らされた道の真ん中で、二人の影は吸い寄せられるようにひとつに重なってゆく。

 しかし敷地内の部隊が攻撃を止めることはなかった。暗闇に潜む隊員らが一斉に自動装銃の引き金に手をかける。

 次の瞬間、ずらりと並んだ銃口が次々と火を噴いた。