「お前ひとりで捜し出せるわけないだろう」

 予想外の言葉に俺は意気消沈し、そして、その姿に昨日までの自分を見た気がしていた。

「でもあなたは?」

「俺のことなら……」

「あなたも捜しているんじゃないんですか? 愛する人を!」

 見えないはずの目に全て見透かされているのだろうか。その問いに対して俺は言葉に詰まった。

「あなたから焦りと不安の感情が伝わってきます。僕にはわかる。あなたはまだ捜してるんですね」

 俺はため息をひとつ吐き出すと、不器用に降りようとする坂下を引き止めた。

「だからってお前を見捨てる理由もないんだよ」

 有無を言わせず左方向へ向かう道へバイクを発進させると、落ちまいとする坂下の手が再び腰を掴んだ。

「ふざけんな、俺だって……」

 生きて死にたい。あきらめて死にたくない。そんな想いが今の俺を突き動かしていた。

「死んでも恨むなよ!」

「は、はい!」