「会えないってこんなに辛いもんだなって、こんなに好きだったんだなって思えてさ」

「ちゃんと見つけられたんですか?」

 見つけられたらどんなに幸せだろうか……。

「ああ、見つけた。だからお前も諦めるな」

 誰に向かって言っているのかわからない台詞だと、心の中で苦笑するしかなかった。

 通りを変えながら捜索を続けるが時間だけが虚しく過ぎてゆく。次第に焦りの色が濃くなるなかで、目にするのは自衛隊員ばかりだ。

 再び前を別の部隊が横切って行った。ここにきて鎮圧部隊の勢いが増してきているようだ。

(もう残るはこっちしかないぞ……)

 目を向けたのは駐屯地の方向。そこから聞こえてくる銃声は激しさを増し、壮絶な攻防戦が繰り広げられていることは見なくてもわかる。

「こっからはマジでヤバそうだぞ。命の保障は出来ないぞ」

「……ここまでで……結構です」

 決死の覚悟を決めた俺をよそに坂下は力なくそう言った。轟音鳴り止まぬ炎に囲まれた街で、盲目の青年は希望を失おうとしていた。