灼熱の炎が容赦なく俺たちを包み、熱風が路地を駆け抜ける。辻に差し掛かるたびにバイクを停め、左右に伸びる道の先に人の姿を捜した。

(このブロックも居ない!)

 すでに多くの人が街から逃げ出した後なのだろう。誰もが自分のことで精一杯なこの状況の中で、耳の聞こえない彼女が一人取り残されている可能性は十分考えられる。

 しかしこの危険な街を一人歩いているとすれば、無事でいる確率はかなり低い。

 後ろにいる坂下の気持ちが痛いほど伝わってくる。俺はそれを紛らわそうと口を開いた。

「俺も昔、はぐれた彼女を探し回ったことがあってな。すっげえ不安で胸が苦しくてさ」

 前方に隊列を組んだ一部隊の後ろ姿が見えた。一直線に春日駐屯地へ向かう歩兵隊は、統制の取れているところから見て鎮圧側だろう。

 それでも信用は出来ない。道を変え、途切れた会話を再開した。