しかしふと見た青年の首から一枚のカードがぶら下がり、そこには『坂下則夫』という名前と住所と電話番号が記されていた。

(そうか、名前!)

 彼女の名前を叫びながら捜すしか手は無い。しかし時計を見ると残された時間はあまりにも少ない。

「悪いが俺も時間がない。三十分も捜せるかどうか……」

「それでもっ……!」

「名前は美里だな」

 それを聞いて坂下は慌てて言葉を付け足した。

「美里は耳が聞こえないんです!」

(なんだと?!)

 俺は絶句した。

 盲目の青年の恋人は聾唖だというのか? 捜し出すことなど出来る訳がない。出来たとすればそれは奇跡に他ならないだろう。だが……