しばらく走ったところでバイクを停めると、後ろの青年に顔を向けて問いただした。

「美里って誰だ?」

「僕の彼女です」

 なんという皮肉だろうか? まさか同じ境遇の人間を助けることになるとは思っても見なかった。それだけにこの青年の想いが痛いほど胸を衝いた。

「どこにいる?」

「二人で逃げてくる途中にはぐれてしまって……」

「どこから来た?」

「春日町から来ました」

(春日町って……)

 その方向へ目を向けると一際激しく炎が夜空を焦がしている。そこは春日駐屯地が位置する場所だ。そこを重点的に空爆しているということは、駐屯地自体が暴動を引き起こしている可能性が高い。

 となると、敵地のど真ん中に突っ込むことになる。

(無理だ……)

 到底たどり着けるものではないだろう。ましてや人を助けるなど至難の業だ。

「どんな……」

 人かと聞こうとして口をつぐんだ。

(絶対無理だ!)

 容姿すら分からないのにどうやって捜せば良いのだろうか?