俺はあさきちを呼び止めた。目の前にある家の壁材が折り重なった瓦礫の下だ。

「……だれか」

(女の声!)

「どかすぞ!」

 二人で瓦礫の山を崩してゆくが、ほとんどはあさきちの怪力によるものだ。亜紀であることを願いながら大きな木の板を放り投げた。

(違う……)

 そこに居たのは亜紀ではなかった。

「とにかく助けるしかないっしょ」

 失望する俺を後目にひとりの女を引きずり出した。年は亜紀と同じくらいだろうか? 亜紀も今このときにも同じように苦しんでいるのかも知れない。

「すまないがレスキューが来るのを待っててくれ!」

 無情なようだが俺は居ても立ってもいられなかった。救助隊のライトが飛び交う中、必死に亜紀の名前を呼びながら俺はさっきの男の言葉を引きずっていた。

(あのとき俺は……)