山肌に張り付くようにして建てられた家々は、巨大な力によって根こそぎ削り取られていた。屋根や壁、家財が散乱し、その中には当然動かぬ人の姿も垣間見える。

「ホントにこっちなん?」

「たぶんな!」

 様相を一変させた町と、五年以上も隔てられた記憶が、目的の家を見つけるのを困難にしていた。何とか持ちこたえている家も、ほかの家の瓦礫に埋もれ、容易に判別出来ない。

「うわっと!」

 泥に覆われた急斜面の道にタイヤをすくわれて、あさきちが何度目かの転倒を喫した。

 そういう道を走ることを前提とした俺のバイクと違い、あさきちのバイクでは立っているのさえ難しいだろう。

「歩いて探そう」

 言うことを聞かないバイクに悪態をつきながら引き起こすあさきちにそう言った。

 遠目にロープを伝い降りて救助に向かうレスキュー隊の姿がちらほらと見え、生きている人間もまだいる事が唯一希望をつなぎとめている。