「邪魔するよ! お姉ちゃん、理人君の何を見て来たの? 一番立ち直れなくて精神を病んだのは理人君だよ。やっと笑うようになったのに!」


 ────っ?!


「お願いだから……これ以上、彼の幸せを壊すような事言わないで」


 苺紅…。

 分かってるよ。だけど、素直に受け入れられないの。


 理人は、理人は…。


「苺紅? 何やってんの、こんな所で」


 っ、理人?!


「理人君!……あ、ちょっと。理人君は?」

「ペン、ここに忘れて。……あった」


 ベンチに置いてあったシャープペンシル。理人はそれを手に取って安堵する。

 あれ、私が誕生日にあげた…。


 苺紅はちらりと私の方を見て、微笑む。


「理人君、そのシャーペン、大事にしてるんだね」


 視線を理人に移して、苺紅が言った。


「ああ。アイツがくれた、たった一つの物だから」

「そっか」

「あ。そういや苺紅、明日の実験さ、………!!」


 理人が私を見て、目を大きく見開く。


 ──え? 私を見て…?

 理人、私が見えるの?!


「李紅(リク)……?」


 理人に名前を呼ばれた瞬間、いろんな映像が頭に流れ込んで来た。


 車のライト。葬式。虚ろな理人。懸命に慰める女の子。理人の笑顔。


 あぁ、思い出した。

 そうだ。私、今ここに現れたんじゃない。

 ずっと、この一年間、理人の傍にいた。死んだ日から、ずっと。


 声をかけても気づいてくれなくて、死にそうな顔して毎日過ごしてたから心配で。

 けど、そんな理人を懸命に支えてくれる優しい女の子がいて。

 理人、笑うようになって……安心して。