遡ること数時間、三澤達は空港にいた。
メンバーはいつもの三人。
三澤、長倉、亜九谷である。
まるでドラクエのパーティーよろしく、ぞろぞろと歩いている。
中を歩く亜九谷が先頭の三澤に声を掛けた。
「三澤さん、自分の荷物ぐらい自分で持ってくださいよ」
「えー、重いよ〜。 やだやだー」
「……そのキャラ正直、気持ち悪いです」
「『正直』とかつけんな!」
亜九谷は三澤を諦め、長倉に頼ることにした。
「もー、千歳も手伝ってよ。同じ助手でしょ?」
「おー、ごめん。今、手が離せない」
謝ってはいるものの、まったく誠意とか悪気とかを感じない発言に、ちら、と後ろの長倉を見る。
器用に本を読みながら歩いていた。
『単細胞でも分かる、モールス信号』
微妙に製作者側の悪意を感じる題名だった。
単細胞は本読めないんだけどね。
「いや、手伝ってよ」
「読み終わったらねー」
それは事実上の『手伝わない宣言』だった。
「はぁ……」
亜九谷はひっそりと、ため息をついた。
これだから、ウチの男どもは。