「いだだだっ!ギブ、ギブッ!」
扉を開けると、通路に関節技をキメられたリッパーがいた。
全てがうまくいったようだった。
「リッパーくん、楽しいフライトをありがとう。お陰で飽きずにすんだよ」
「ははははっ! 今回は俺様の負けだな!」
リッパーは嫌みを言う三澤を見上げて、笑った。
……今回は?
この状態で、まだ次回への希望を持っているのだろうか。
だとしたら、見習いたいくらいの楽天家だ。
「お前、名前を聞かせろ!」
「ふっ……」
リッパーの要求に、三澤は眼鏡のつるを指で押し上げた。
しかし実際、そこに眼鏡はない。バーチャル眼鏡だ。
そして、一言。
「三澤斗春。探偵さ」
「……………」
「………………」
「……………………」
客室が
空気が
機体が
全てが静まり返った。
ここで、滑りますか、あなたは。