「ところで、亜九谷。 ジャック犯は何人いるでしょうか?」


三澤のいきなりの問い。


考える。

見たままならば、2人だ。
だが、もっといる可能性もある。


…………。


3〜4人くらいだろう。


ぽん、と丸めた雑誌で頭を叩かれた。


「ヒント・開口一番」


開口一番?
ジャック犯の?


えーと……『この飛行機は俺様が乗っ取った!』だったかな。


俺、様?


俺達ではなく俺様。



考える。



犯人は交互に現れる。
二人同時はない。


服装を変え、覆面を付け、靴で身長をごまかす。


「………単独犯。でも、そこまでして人数を誤認させる理由なんてないですよ?」

「1人だったら取り押さえれば終わり。だけど、何人かいるかも知れなかったら、そうはいかないだろ?」

「なるほど……じゃあ、あいつを捕まえれば」


希望が見えた。


「事件は解決だ……と言いたいが、肝心の解決方法が、もう少しなのに」

「もう少し?」

「飛行機……不景気……コテンドー。あと、一つ。 ひとつ足りない。 これで『詰み』なのに」


亜九谷には、どうなれば『詰み』なのか全然分からなかった。


三澤が独り言ちる。


「どうにかして、ソラだけに伝えられれば……」


伝える。

秘密に。

暗号。



「あ」



………信号!


モールス信号!



「三澤さん、それですっ!!」


三澤の左手。


そこには、先ほど私をどついたモールス信号の雑誌が丸めて握られていた。