「はぁ……」
亜九谷は、また、ため息をついた。
何なんだろうか。
何なのだろうか
ほとほと嫌になる。
ほどほどにしとけ。
有り得ない。
有り得るはずがない。
有り得ていい道理がない。
なんで、なのだろう。
私が何をしたって言うの。
煙草も吸わない、
お年寄りには席を譲るし、
ガムは紙に包んで捨てる、
年金だってちゃんと払っている。
私はきちんとしている、というのに。
じゃあ、何故。
亜九谷はちらりと横の席を見た。
三澤斗春。
この人の所為だ。
そんな気がしてならない。
「はぁ……」
亜九谷は、こんな状況下で子供のように目を輝かせている隣の席の男を見て、眩暈を覚えた。