それから電車が来たので乗った。

まだ彼の手は私の腰に。

電車は帰宅のラッシュ時だったらしく、満員の手前ぐらいだった。

電車に乗っているほとんどがサラリーマン。

彼はさりげなく私を守るように立っていてくれた。

紳士だなぁ。

この人に出会えてよかった。

幸せ過ぎる。

『ねー、菜月。今度いつ会える?』

と不安げな顔をして私に問う。

『んっと…金曜日かな?』

と答えると彼は『そっかぁ』と嬉しそうな顔で微笑んだ。

彼の表情はコロコロと変わって
不思議と幸せな雰囲気に包まれる。


そんな事を考えていると私が降りる駅に着いた。

『送ってく?』

『へーき』

『ホントに?んじゃ、また電話するよ』

そう言って名残惜しそうに手を離した。