「一人でじっくり部屋で考えたいんです、って嘘ついちゃった」


罪悪感に駆られてるのか辛そうに目を伏せる馬鹿。



「あたしが悪いのに、松井さんにも社長にも沢山の人に迷惑かけちゃってる」


ひらり、と散る桜の花びらを手に閉じ込める姿に目を奪われつつ、口を開いた。


「お前が、悪い…?」

「…うん」

「それは、肯定ってことかよ」



ぴたり、と馬鹿が動きを止め俺をじっと見つめた。



「……肯定?」

「付き合ってんのかよ」


今、俺、さっきの晴翔に負けねぇぐらい情けねぇ顔してる。



「……どうなんだよ」

「いちる、現場の時とか見てるじゃん!」



お前らの熱愛っぷりなんか見てるわけねぇだろ、ばーか。



「見てねぇよ」

「だって三人で話したりしたじゃん!」

「…しらねぇよ」


黒いモノは俺を覆い尽くそうとしていた。


「飯、食いに行った時も時間合わせてたのかよ」

「違うよっ」

「あっちはそうかもしれねねぇだろ」

「なんで朝浜くんと…」

「普段どおりに名前で呼んだら」


止まることを知らない言葉。



「普段どおりって…この前知り合ったばっかり…」

「まだ日が浅いってこと」

「え?」


……なんか話が噛み合わねぇ。