キス以来二人の間には厚い壁のようなものが出来た。


あたしには超えられない厚い壁。


いつも通りなのに何かが違う。

それはあのキスのせいだ…きっと。

「美羚ちゃん…あのさ、俺留学しようと思うんだけど…」


いつものように朝食を済ませて家を出ようとした時だった。



え!?冗談でしょ?


「ま…待ってよ?冗談でしょ…」


仁は今までに見たことの無いような真っ直ぐな瞳であたしを見た。


「本気なんだ…先生にも言ってるし来月には旅立つつもり…」


来月!?


そんなの…速すぎるよ。


「美羚ちゃんこれからは思う存分一人でいれるから…あと1ヶ月だけ我慢してね?」


我慢?


あたし我慢なんかしてない…

純粋に空気読めない仁といて楽しかったし…

だけどね、弟として仁を見れなくなって来たんだ。


一人の男として…


仁を見ていた。


あのキスはきまぐれだったのかも知れないけど


「分かった。あと1ヶ月よろしくね?」


あたしには大きな奇跡に感じたんだ。