「お…おかえり。」

美羚は下を向いた。

「美羚ちゃんどうしたの?」

仁はかかんであたしの顔を覗きこんだ。

あたしはとっさに後ろを向いた。

「美羚ちゃんこっち向いてよ?」

美羚は走って寝室に入った。

こんなんじゃまともに仁に話すことも出来ない…


「美羚ちゃん☆」


仁は中に入ってきた。


「なんかした俺?」


さっきまでの弟の仁じゃなくて…

男の仁になっててびっくりした。


「美羚?」


初めて美羚って呼ばれた。


「さ…さっき麗奈ちゃんとキスしてたよね?」


あたしはまだ仁の顔を直視出来なかった。

「見てたの?」

仁は言った。

「違…偶然通りかかっただけ…」


言い訳しようとしたら…仁の唇があたしの唇に重なった。


どうしたらいいか分からなくて…

目を開けたまま。

たったの数秒が長く感じた。


相手が仁だから?


あたしは仁をどう思ってるの?

キスの後の口元からは仁の匂いがした。

仁はなんか顔を赤くして部屋を出て行った。


このキスに深い意味はないよね?

自分からキスするのは好きな人だけって言ってたけど…

もしかして。



あたしなの?