「じゃあ控え室まで案内します。と言っても、従業員の休憩室ですけどね」

僕はそう言って冬椿を案内した。

「大丈夫よ、いつもの事だから。ここはまだ良いわ部屋があるもの。へたすると、イベント会場のすみで着替えたりするの。笑」

冬椿は部屋に入ると、やっと重たそうなトランクを机の上に置いた。慣れた手つきで三味線を出すと、あっという間に組み立てた。僕は目を丸くしてそれを見ていた。まるでマジックみたいだ。

「面白い?こうして組み立ててね、こうやって」


冬椿は三味線を組み立てると、バチを持って弾き始めた。
僕はただ、ただ、その音色に驚き聞き惚れていた。
初めて聞く、心に沁みる音色…。