僕はだんだん不安になってきた。台本を取り出すと、一応マイクを持って読んでみた。電源はまだ入ってないから大丈夫だし。

「ちょっとー、間違えないようにね」

パートのおばちゃんがからかう。

まだ客のまばらなスーパーの駐車場の一角で、舞台も何もない、あるのは垂れ幕とパイプの椅子、それにマイクだけだった。
冬椿はこんな所で歌うのか…。
そんな事を考えていたら、肩を叩かれた。

「もうそろそろ始まるぞ、しっかりやってくれ」

店長に言われて、僕は慌てて冬椿を呼びに行った。
まったく、案内役と司会両方なんて無理だっつーの。緊張感が顔に出ていたらしい、冬椿にもちゃんとやってよと念を押された。