分厚いカーテンを閉めたせいで、通路を隔てた向こう側の窓に自分の姿が映っていた。


(髪……伸びたなあ……始業式までには切らなくちゃ)


少し頬がこけたような気がして、手でさする。

今朝そり忘れたヒゲが指先をチクリとさした。



「先生ヒゲそりなよ。キスするとき痛いよ」


未央の子供っぽい声も今は、ただ懐かしい。

ほとんどの生徒が茶髪にしている中で、彼女の無造作に束ねた黒髪は逆に目立っていた。


彼女の気持ちに答える事が出来たのか……結局は保身という本音を『教師だから』という理由で覆い隠し、傷つけただけじゃないのか?