ハゲの校長のうっとうしい顔も、バーコードの教頭の金切り声も、ズラの学年主任の偽善者ぶった皮肉も……。



「なんだ……みんなハゲじゃねえか」



無意識に口をついた言葉に思わず笑みがこぼれた。

目をあけて隣に置いたバッグを見る。

半分ぐらいしか入っていないせいで、少し潰れている。

冷蔵庫やテレビなんかの大物は引越し業者に頼んだとは言え、大学を出てから5年間の荷物が、このバッグすら満たせない事に不思議な気持ちになった。


これからの人生で、このバッグもいずれ満たされるだろう……ポッカリとあいた胸の空洞も、時間が経てばきっと癒される。