「これで、録音テープは終わりです。いずれにしても、恵ちゃんは亡くなっていたかも知れません。当院で診察した結果、腹部の刺し傷は、恵ちゃん本人が刺したものと思われますから。」
私がそう説明すると、警察の方はもちろん、恵ちゃんと加奈ちゃんのご両親も口を開くことはなかった。恵ちゃんは、術後、縫合不全による出血で死亡した。恵ちゃんの葬儀が行なわれてまもなく、加奈ちゃんは、自宅にほど近い、この街の海岸で遺体で発見された。死後8日たっていたようだ。地域新聞の隅に小さく、女子中学生が相次いで自殺と報じられた。確かに、仲が良かった2人が、死を選んだと言えばそれまでかもしれない。けれど・・自殺が自死だとすれば、加奈ちゃんと恵ちゃんの死は、もうひとりの自分によって殺された他殺ではないのか、そう私は思う。今となっては、本当のことを知ることにどれだけの意味があるのだろう。「あの日加奈があたしを友達だって言ったから、死んで欲しいと思った。」恵ちゃんの最後の言葉をカルテに記入すると、それを閉じ、私は病院をあとにした。