四人の男達は、既に林太郎の人格など一顧だにしていなかった。

 鬼芦がしつこく林太郎をキャンバスで応援団に入れようと誘ったとき、手下どもは後ろ手に腕を組んで直立して並んでいた。鬼芦が股間を蹴られて蹲ってたとき、彼らはそれに動ぜず苦笑して見ていた。そのときはまだ一線を越えてなかったのだ。林太郎が彼らを侮蔑の表情で見ながらこう言うまでは。
「お前等ホモ同士で仲良くしてりゃいいじゃねえか!」

「く、来ると殺してやる!」
 絶体絶命の林太郎の目には涙が貯まっていた。この連中が冗談めいて言ったことが、本当に自分に起こることは明らかだった。怒りに任せ、獣になった彼らに理性などありえようはずはない。ただ、性欲の命ずるまま行動するのだ。

 男なのにずたずたになるまで犯され、奴らの精液にまみれて引きずり回される自分を想像した。

 小さいときから、一部の大人達にそういう目で見られていると言うことは意識していた。同性の級友の幾人からも慕われていたということも知っていた。だから出来る限り男っぽく振る舞い、持ち合わせた運動神経で大立ち回りをすることもあった。鬼芦の勧誘に過剰反応してしまったのも、大学に入っても自分がそういう目で見られたという怒りからだった。
(いやだ!助けて・・・!)

 林太郎の脳裏に何故か『あの』男の笑い顔がよぎった。