林太郎は応援団の部室の真ん中に敷いてあるマットに投げ出された。

 サッカーシューズを脱がされ、両腕は後ろで革バンドで縛られていた。半袖のホーム・ユニホームは引き裂かれ、下の長袖のトレーニング・シャツが捲られて腹が見えていた。下半身には長めのサッカーパンツにカーキ色のソックスを履いていた。

「なにをしやがる!」
 林太郎は半分身を起こして怒鳴った。口からは血を流している。奴らが何をしようとしているのか見当がついているので、さすがに普段の威勢よ良さはない。目に脅えの色が映っていた。

 三人の学ランの手下の前に鬼芦が出てきた。この三人は鬼芦と同じ性向を持った奴らだ。他の応援団員はもちろんこんなことが起こっているなどとは知らないだろう。全員が悪者という分けではない。

 『ダースベーダ』が骨張った顔をにやにやさせながら、優しい口調で言った。林太郎の顔は嫌悪と恐怖で引きつった。

「・・・林(りん)ちゃんよ。この間はよくも俺に恥をかかしてくれたなあ。団に入ってくれれば、優しくしてやろうと思ってたのにい」

 林太郎は肩で息をしながら、マットの上で仰向けに後ずさりしようとした。ソックスがマットに滑って殆ど動けない。