どおんっ


大きな音がして、地響きが起きた。
私は思わず立ち止まりたかった、……のに。

久遠さんに引っ張られて、そちらに近づく羽目になる。

えーっと。
歩幅とか、体力の違いとか。

考慮するつもりはありませんか?


文句を言おうと顔をあげた私の目に映ったのは、以前よりずっと見通しがよくなった庭。

……え?


目を凝らせば、もうもうと舞い上がる土埃の向こうに、日本刀を振り下ろしている智さんのシルエットが見えた。

私は思わず埃っぽさに口を押さえる。

緊張感が張り巡らされていた。


ゆっくりと、土埃がおさまる。
シルエットだった智さんの姿が見えてくる。

彼が身に纏っている、元は白かったと思われる剣道着に剣道袴のような着物は、土色に汚れていた。
こちらを見ている智さんの目は、見るものの心臓を射抜くような鋭い光を携えていて、私は深く息を呑む。

日本刀は夏の日差しを浴びて、鈍い銀色に煌いている。


良く見れば、大木が幾つも地面に転がっていた。


……日本刀って、大木なんて切れたりするの?