「飲まずってことはないと思うけど。
 こんなに暑いんだし。
 で、なっちゃん、霊力は無いわけ?」

あ、また話が戻った。

「残念ですが、自覚は無いです」

車はついに、この前と同じ場所に止まる。

「じゃあ、あれだな。
 ぶっつけ本番で力を磨けってことだ」

……なんですって?

久遠さんが楽しそうに言うので、私は目を丸くする。

「獅子の子落としって言うしさ、ほら」

強引にドアを開け、久遠さんが私を引っ張る。

う、うわ。
私はアナタの子供じゃないですっ。
千尋(せんじん)の谷に突き落とす必要なんて、ないと思うんですけど。


やーめーてーっ。