刀を納めて、縁側に行く。

久遠さんがぴんと背中を伸ばして、お茶を点てていた。
すっごい。
美しいとしかいえない所作に、彼の人格も忘れて目を奪われる。

「久遠ってさー、茶室に入ると別人なんだよね」

奏さんが小声で呟く。

「そうですね」

もっともここは茶室じゃないけど。

それを、無作法に片手で受け取り、豪快に飲み干す智さんもそれはそれで美しかった。
彼らの前方に広がる黄昏色の世界にとてもマッチしていて。

やっぱり私は昔の世界に迷い込んだような錯覚を覚えてしまう。

「お前たちも飲むだろう?」

立ち尽くしている私たちに向けられた久遠さんの瞳は、有無を言わせぬ強さとなんともいえぬ温かさの両方を兼ね備えた眼差しで。

気づけば縁側に座り、冷水で点てた抹茶をいただいていた。

すっごく泡が細かくて、とてつもなく美味しい。


「すっごくおい……」

「茶の味についての感想は不要と言っただろう」

久遠さんは冷たく言いなすが、別段、不快という感じでもない。
早くも彼のキャラに慣れちゃったのかしら。

ああ、この人はこういう人なんだな、と。
何故かひどく納得がいったのは、しっかりした中に優しさを感じるようなお茶の味だったから、なのかもしれなかった。