「久遠、そろそろ中に入ったほうがいいんじゃない?
 ダテちゃんがお茶が飲みたいって騒ぎだすよ?」

奏さんがにっこり笑って言う。

「仕方ないな、淹れてやるか」

「だだだ、ダテちゃんってっ」

雰囲気とあまりにもミスマッチな呼び名に私はついていけない。

「だって本人が伊達って名乗ってるんだから、それでいいんじゃない?」

奏さんは清々しいほどあっけらかんとそう言った。

「あ、あの。
 あれって本物の戦国武将の伊達政宗なんですか?」

「どっちにしたって霊なんだから。
 細かいことはどうでもいいだろ。
 それともあれか? 本物ならサインでももらっとく?」

私の問いに馬鹿にしたようにそう言い捨てると、久遠さんは先に歩き出す。

……そういうものなのかしら。

霊に慣れてない私は(慣れている人のほうが圧倒的に少ないとは思うんだけど)、この状況についていくので精一杯。

「でも、良かったねぇ、なっちゃん。
 初対面にしてダテちゃんから刀を預かるなんて、相当気に入られている証拠だよ」

奏さんは無邪気な笑顔でそう言った。

……美青年から気に入られるのは嬉しいことには違いないけれど。
この場合素直に喜んでいいものかどうか。


判断しかねるのですが。