ダイニングで紅茶を啜っていた彼が、笑顔の素敵な優男だとすれば。
声をかけづらいほどの、緊張感を帯びた空気を纏って刀を振るっている彼は、笑ったことが一度も無いような、厳しい表情の似合うストイックな男。
真夏の暴力的な暑さがまだ引かないことなど気にすることもなく、刀を振るう。
飛び散る汗がスローモーションのように、私の瞳に飛び込んでくる。
その様から目が離せない。
散々素振りを繰り返した後。
ようやく、智さんは素振りを止めた。
まるで、私たちがここに居ることを最初から知っていたかのようにゆっくりと振り向く。
不思議と、右目の光が無い。
その分、左目がぎらぎらと底知れぬ輝きを帯びていた。
……夕日の加減、かも知れない。
「奏か。
……そちらの女は?」
倒れそうなほどに、低い声。
釣りあがった細い瞳。
紅い唇をぺろりと舐める紅い舌は、獰猛な獣を想像させる。
汗に濡れた黒髪は、色気に似た何かをを醸し出していた。
――違う。智さんじゃ、ない。
「なっちゃん、自己紹介っ」
奏さんが小声で囁いてくれるけれど、呆然としている私は声も出せない。
いまだ冷めやらぬ熱気を孕んだ夏の風が、頬を撫でていく。
声をかけづらいほどの、緊張感を帯びた空気を纏って刀を振るっている彼は、笑ったことが一度も無いような、厳しい表情の似合うストイックな男。
真夏の暴力的な暑さがまだ引かないことなど気にすることもなく、刀を振るう。
飛び散る汗がスローモーションのように、私の瞳に飛び込んでくる。
その様から目が離せない。
散々素振りを繰り返した後。
ようやく、智さんは素振りを止めた。
まるで、私たちがここに居ることを最初から知っていたかのようにゆっくりと振り向く。
不思議と、右目の光が無い。
その分、左目がぎらぎらと底知れぬ輝きを帯びていた。
……夕日の加減、かも知れない。
「奏か。
……そちらの女は?」
倒れそうなほどに、低い声。
釣りあがった細い瞳。
紅い唇をぺろりと舐める紅い舌は、獰猛な獣を想像させる。
汗に濡れた黒髪は、色気に似た何かをを醸し出していた。
――違う。智さんじゃ、ない。
「なっちゃん、自己紹介っ」
奏さんが小声で囁いてくれるけれど、呆然としている私は声も出せない。
いまだ冷めやらぬ熱気を孕んだ夏の風が、頬を撫でていく。