「智さんって一体何をされている方なんですか――?」

「ん?刀工だって、言ってなかったっけ?」

と、トーコー?
漢字変換できない言葉が、私の中で舞っている。

「ほら、ついた」

山道を走って、たどり着いたのは一軒屋。
燃えるような真っ赤な夕日の中。

「しぃ」
と、奏さんが仕草だけで合図した。


……ぶん ぶん

空気を切るような低い音に、驚いて足を止めて目をやった。
平屋の日本家屋の横の空き地で、智さんが刀を振っているのだ。

刀、だよ?
剣道の竹刀や、木刀じゃなくて。

あれはどうみても、「日本刀」
夕日を浴びて、きらりと、この世のものとは思えない妖艶な輝きを発していた。

智さんはひどく真剣な顔で、素振りの練習をしていた。

いや、真剣なんてもんじゃない。
鬼気迫る何かを感じて足が動かなくなる。



仮に、喋るなと言われてなくても喋れなかったんじゃないかなと思う。
圧倒的な迫力に気圧されて。