「ってかさ。何二人で楽しく盛り上がっちゃってんの?」

奏さんが真顔で突っ込んでくる。
えーっと、楽しく盛り上がった覚えはありませんが。

「とにかく、そうと決まったら出かけよう。
 久遠も来る?」

っていうか、どちらに出かけるんでしょうか?

「うむ。折角だから見届けよう」

なんだかそこ、二人で話がついてるんですけどーっ。

「ほら、なっちゃん。
 ぼさぼさしない。
 花屋は手際が命なんだからね」

……今、花なんて触ってませんよね?

私の意見に聞く耳も持たず、奏さんが私の腕を引っ張っていく。
えーっと、イケメン好きな私としては奏さんほどのイケメンに、臆面もなく手を握られて引っ張られているこの現状を素直に喜ぶべきなのでしょうが……。

「って、いったい智さんはどこに居るんですか?」

花の配達用のトラックの助手席に載せられた私は奏さんに問う。
久遠さんはそんなチープな乗り物に乗ってられるか、と。
一人で例の赤い車に乗っていた。

「ん?ほら、アレってなかなか街中でやるのは難しいでしょ?
 防音設備を整えるより、田舎の一軒家でやった方がいいんだって。
 試し切りも可能だし、さ」

もはや、奏さんは何かしらの重荷を一つ振り落としたかのようにすっきりした笑顔で応えている。


た、試し切りっていうのは、その。
何のお話なんでしょうか?