「お帰り~」

接客に追われている奏さんに代わって、にこやかに出迎えてくれたのは久遠さんだった。

「……あれ?
 喧嘩しちゃった?」

私は智さんの手を離して、久遠さんの耳に唇を寄せる。

「智さんって、男色なんですか?」

真剣な質問なのに。
久遠さんは、声を上げて爆笑するんだもんっ。

ひどいっ!

「お前ら、仕事手伝う気がないなら奥に下がれっ」

奏さんが、花を包む手を止めてわざわざ私たちの傍に来ると、笑顔のままでほかの人には聞こえないほどの小声で一喝した。

……うん、器用。


久遠さんは涙を拭きながら私を手招きする。

「智、夏希の代わりに手伝ってやってよ」


なんて言い残してから、奥へと向かった。