「おいくらですか?」

「あら、いいわよ。
 お近づきのしるしに奢っちゃうわ」

「そういうわけにはいきません」

「じゃあねえ……」

なんて言いながらカウンターから出てくるマスター。

智さんはマスターに引き寄せられるように立ち上がると、首脳会談が始まる時によく見る風景かと思うほど、にこやかに右手を差し出した。

つられるようにマスターも右手を差し出す。

と、それを掴んだと同時に彼はマスターを抱き寄せた。


……ええっ?


智さんは魅惑的な笑顔をそのままに、マスターの顎に指をかける。



ちょちょちょ、ちょっと待ってよっ。