「あの、殿ってそんなに伝説の人物なんですか?」

「少なくとも僕たちの間ではね」

奏さんが緩やかに微笑みながらそういった。

「でも、なっちゃん。
 伝説の人物なんで、リアルな詳細は教えてくれなくていいから」

……どう伝説なのかしら。

好奇心だけが、むくむくとわきあがる。

「話は分かった。
 対応策を考えよう。
 智はどのくらい動けるんだ?」

久遠さんが、私を喋らせないためにか、早口でそう切り出した。
そんなに「リアルな殿」についての話は耳に入れたくないのかしら。

「刀さえ持たなければ、今のところ大丈夫」

「……そうか」

ふむ、と、久遠さんが難しい顔で思考を巡らせている。