『今日は、ありがとう。』



『あ、うん。』



深い話をするわけでもなく…ただ、並んで足を進めた。



『あした…』



『えっ…』



気持ちが空に向いていたから、俺は桜井さんの話を聞き逃したと思って…とっさに、声が出た。



『あしたは、桐原くん…予定とか、ある…の?』



『あ、うん。…ごめん。』



『そっか…残念。』



『桜井さん、どうかしたの?』



『あ、いいの。特別な事とかじゃないから…』



そう言って、柔らかな風に靡いていた髪を片手で抑えた。