右腕の自由は、長時間という程奪われていなかった。


桜井さんが俺を引いて連れてきたのは、大型ショッピングモールの映画館だった。



『1人で、見ようかなとか思ってたんだけど…一緒に見てくれない?』



『俺は、別に構わないけど。』




薄暗い劇場。俺ら二人は、見やすい席を選んだ。



“とある街、とある人”



今人気を博している俳優が主演で、今年話題作と評判の作品らしい。
あまり、テレビやメディアとかいう名のものに対して興味も湧かなかった。だから、流行りとかそう言ったものに疎い。



上映の時間は、短いと感じる程あっという間に過ぎていた。ショッピングモールをでる頃には、朝の雪模様も綺麗な透き通る青がセカイを染め変えていた。