『ありがとう』


『え、どうして…あたし、何もしていないよ。』


『ううん、なんかな…わりるい。』


『どうしたの…謝ったりして意味わかんないよ』


『だな…』



なんでかな、こんな毎日もいい気がしてきたんだ。暖かい毎日が、羨ましく思えていた昔。俺は、憧れだけをうっとうしく感じていたのに。



『あのさ、俺。思っていたんだけど、いや…気になっていたんだけど、さ』


『うん』


『俺は、君が好きなんだ』


『うん』


『一緒にいると落ち着く』


『うん…』


ただ、頷く君に。俺は、恥ずかしいという気持ちより素直な言葉に不思議と自信が湧いていた。


『あたし…あたしだって、好きなんだから』



しばらくして、聞こえた声は少し震えた声に聞こえたんだ。でも、柔らかい声に何故だか嬉しくて涙が出そうなのを必死に堪えていた。








ゆっくりだけれど、時間は流れていた。何時しか、夕焼けに映し出した校舎の影が伸び始めていた。


『一緒に帰ろう』


君は、ただ頷いて手を差し出した。そっと、包んで俺は強く思い踏み出した。







この手は、二度と離さない。君のいる世界で君のとなりで俺は生きて行くんだ。


終わるセカイは、今。動き出したんだ、セカイはまた新たなセカイで動きはじめた。