「でも…頑張ってる愛空は好きだけど、頑張りすぎてムリをする愛空を見るのはイヤだ」
「別に頑張り過ぎてなんかないよ…」
「誰にも言わないから…愛空の父ちゃんにも誰にも。だから…」
「だから…?」
「…俺の前では…無理すんな…」
拓真は私の両手をギュッと握りしめる。
胸の奥で、何かが激しく動くのを感じた。
「…拓真ってさ、真っすぐだよね」
「何が?」
「言葉が。だから嬉しいの…」
「愛空……」
大丈夫…私は
弱くなんかない
強いはず…強くなる
お父さん…私は強い子だから
「…私は大丈夫…でも……たまにこうしてもいい?」
そう言って、拓真の胸に飛び込んだ。
「……っく……っく……拓真ぁ…っ!」
拓真の胸で思い切り泣いた。
自分は強いって言い聞かせて
強くなろうとしてきた
泣かないで偉いねって
周りの大人たちに褒められたりもした
強くなりたいって
願うほどに
私は苦しくなった
「…泣きたいだけ泣け」
本当は泣きたかった
ずっと…こうやって
でも…私が泣いたら
お父さんが悲しむから
お父さんが悲しむのは
一番イヤだから
あの日…まだ5才だったあの日に
もう泣かないって誓ったはずだった……
「……お弁当…投げなくてもいいじゃんかぁ…。カズのバカー!一生懸命作ったのに…」
「おっ!その調子、言いたいこと言いまくれ…っ!」
「………うっ……っく…」
「…愛空……?」
「……あの時、すごく嬉しかった。拓真…私の為に…」
拓真は、泣いてる私を強く抱きしめる。
「ずっと、ここはおまえの泣く場所にしとく」