放課後、下駄箱でひとり帰ろうとしていた拓真にあたしは声をかけた。




「ねぇ、拓真」




「んあ?」




うわっ!機嫌悪いなぁ…拓真。愛空のことがあったからだろうな。




「愛空って…お母さんいないの…?」




愛空と一番仲が良い拓真なら、色々知ってると思った。




「そーだよ。そんなことも知らなかったんか?教師失格だな」




拓真は、そう言って、歩いて行ってしまった。




「拓真待って!愛空もう帰った?」




「…帰ったよ。…あそこにいんじゃねーの?」




拓真はぶっきらぼうに答える。




「どこ…?教えて!」




「海」




学校から歩いて10分ぐらいの場所に海がある。




「ありがと、拓真!気をつけて帰ってね」




――…バタンっ




「大丈夫かよ?先生…ここ水ぶきしたばっかりだから転びやすいんだ」




派手に転んだ、あたしの目の前に拓真は手を差し伸べてくれた。




「ありがと…拓真。先生…ホント教師失格だわ…」




「まぁ…がんばれって…」




「うん………」




「…そうは言っても、愛空は絢音先生のことだいぶ好きみたいだぜ?」