――……次の日、クラスで事件は起きた。




「愛空ちゃんのお弁当ちょ~カワイイ~っ!」




学級委員の愛空の周りに、女子生徒が数人集まる。




「いいなぁ~こんなお弁当なら毎日楽しみなのにぃ…」




女子生徒たちは、愛空のお弁当の中身があまりにも華やかなので、羨ましそうに眺めている。




「そんなこと…」




愛空が言った瞬間、クラスの男子の一人のカズが、そばに来て愛空のお弁当箱を手に取り、それを思い切り前の黒板に投げつけた。




「…………」




クラスは一瞬で静まり返り、沈黙が流れた。




愛空のお弁当の中身はぐちゃぐちゃになって床にこぼれた。




「ひどぉー!!カズったら、何してんのよ!!」




「そうよ、そうよ!」




愛空以外の、周りにいた女子たちが、騒ぎ始める。




その騒ぎを聞きつけて、廊下で拓真に宿題忘れの説教をしていたあたしは、拓真と二人で教室に駆けつけた。




――…ガラガラッ




「あんたたち、何事?!」




あたしと拓真は、まだ何が起きているのかわからずにいた。




足元には、ぐちゃぐちゃになったお弁当箱が床に落ちていた。




「こんな弁当、たいしたことねーよ!愛空ん家、母ちゃんいねーじゃん。母ちゃんいねーくせに誰が弁当作ってんだ?無理しちゃってさ?うぜーんだよ!」




そう言って、カズは愛空の肩を押し殴った。




「ちょっ…カズ…」




あたしが駆け寄ると、




「母ちゃんいねーくせにっ!」




カズは、愛空に向かって叫んだ。