神社の帰り道、俺は隆太郎と手を繋ぎ歩いていた。




「パパのね…大事なひとがね、むずかしい病気なんだって」




隆太郎が話し出した。




「そう…なんや」




「だから毎日朝ね、早くにねあの神社へ行ってパパはお願いしてるんだ」




胸が締め付けられる想いだった。




「桜井先生の大事な人は、隆太郎だよ」




「パパがお願いしてるその人と、ボクのこと同じくらい大事だって言ってたよ?ボクが大きくなったら教えてくれるってさ」




なぁ…まさかさ



俺なんて言わへんよな?




俺は捨てられたんやで?




アイツを父親なんて認めへんよ




「パパね、その人に謝りたいんだって。でも素直になれないんだって。パパはおしゃべりがあんまりね、うまくないんだぁ」




謝られて許せるほど




俺は優しくない




きっと…一生許せへん




いまさら…大事とか




もう…遅いねん




「ゆーや?」




「ん?何でもあらへんよ…」




「あっ!パパだぁ!」




道路を挟んだ向こう側の遠くに、白衣姿のアイツが見えた。




きっと病院を抜け出したことがバレて、探しにきたのだろう。




「パパぁ~!!」




「あっ!ちょーまてやっ…走ったらあかんやろが…」




隆太郎は、俺の手を離して、道路に飛び出してしまった……――。




道路の真ん中で、隆太郎が突然、胸を抑えてうずくまる。




そこに猛スピードで走ってくるバイクが目に入り、俺はただ夢中で走りだしていた……―――。




「隆太郎…っ!!」




――……キキキキーーッ!!!……ドンッ!!!