「…そ、そぉなんだ……よかったね」




落ち着かなきゃ…あたし。




「いいんじゃない?…ママもいつまでも一人ってわけにはいかないよね。寂しいもんね…」




ママの目を見ることが出来なかった。




「絢音…、聞いてちょーだい…」




「何を?…別に何も聞くことないよ。再婚…いいと思うよ?」




「絢音…ママの話聞いて…」




「別に、いいってば!」




自分の大きな声にハッと我に返った。他のお客さんも店員さんもこちらを見ている。




「今日はね、その話をしに来たのよ」




「…何を聞けっていうの?再婚相手の話なんか聞きたくなんかないし、知りたくもない…」




「絢音に会って欲しいのよ…」




「何で…?あたしは関係ない!」




「ママね、絢音とまた一緒に暮らしたいのよ…。相手の人も絢音に会いたいって言ってくれてるし、お金には困らないから…」




「もうあたしも20才だよ?一人で生きていけるから…」




「まだ大学生じゃない。お嫁に行くまででもいいわ。絢音は私のたった一人の娘だもの。お願いよ…」




ママは、テーブルの上で、あたしの手をギュッと握り締めた。




「あたしは…あの日、ママを捨てた…」




「……そうね。すごく悲しかったわ…でも絢音は優しいから、何もできないあの人のそばにいるって決めたのでしょう?」




選んだのは…あたし


あたしは…ママを捨てた




「幸せになって…ママ」




「絢音…一緒に住むこと考えてみてちょーだい…お願いよ…」




「そろそろ帰る…あたし約束あるし…」




話を遮って、あたしは席を立ち上がった。




「絢音…また会いにくるわ」




ママを捨てたのは

あたしなのに……




勝手な感情ばかり




喫茶店を出ると、一筋の涙が頬を伝った。