「色んなことあって…深く傷ついてた蒼くんの心が、沙羅の父親と過ごしていくうちに、少しだけ癒され始めていた頃………事故は起きたの」




「……事故?」




「ある日ね、蒼くんと沙羅の父親が二人でキャンプに出かけたらしいの…。その行く途中の車で…前から車がぶつかってきて……事故に遭ったって…」




「…そんな……蒼…っ……蒼はどっかケガしてるの?」




あたしの問いに、ミミちゃんは首を横にふった。




「…蒼くんは、かすり傷程度で済んだの。でも…」




ミミちゃんは、俯く。




「沙羅の父親は……その事故で亡くなった」






事故に遭った時、沙羅の父親は、とっさに蒼をかばった。




蒼は一瞬何が起きたのか、わからず…




そっと目を開けると、沙羅の父が、蒼の身体を守るように上乗りになっていた。




蒼は、血だらけの自分の手を見つめるが…何故か痛くない。


この自分の身体にべっとりと付いている大量の血は、自分の血じゃなく、沙羅の父親の血だと気づく。




“光一さんっ…!”


呻く沙羅の父に向かい、何度も叫んだ。




“何でかばったんだよっ!?俺なんか死んだって…誰も……光一さんは違うだろっ!?沙羅が………”




“……蒼…くん……沙羅を頼む……よ……”








沙羅の父は、蒼の腕の中で息をひきとった……―――。